アメリカミズアブの出荷タイミング

 全世界に広く分布するアメリカミズアブですが、成長には段階があります。
幼虫は暗くて湿度が高いところで成長しますが、さなぎは暗くて乾いているところで成熟します。
ですので、前繭は地中から這いだし、高いところに移動する習性があります。
 その習性を利用して収穫することも出来ますが、成熟した幼虫も収穫段階にあり、習性を利用した自然収穫は効率的とは言えません。
 前繭段階の成熟した幼虫をふるいにかけて収穫することが多いようです。
この段階で幼虫を商品として出荷することが可能になります。
 卵から成熟した幼虫までの日数は14日前後で成長が早いのが特徴です

アメリカミズアブの成長日数

幼虫:12から14日
前繭:14から20日
さなぎ:20から34日
成虫:34から40日

アメリカミズアブの販売価格

 飼料用昆虫として注目されているアメリカミズアブの幼虫ですが、世界では取引価格はどのくらいになるのでしょうか。

 以下のyoutubeでは新鮮な幼虫は下記の値段で取引されています。(2分58秒)
アメリカミズアブの幼虫は60%が水分ですので乾燥させると約1/3程度になります。
 価格を考慮すると、高騰している魚粉の代わりとしても十分に対抗できると思われます。
 機械化を進めれば利益率も高く、商材として十分に成り立つようにも思えます。

新鮮な幼虫
59-74円/kg(0.4-0.5$/kg)

ここから乾燥させた重量あたりの価格を計算し、魚粉相場と比較しました。
乾燥幼虫から油を圧搾し、粉末と別に販売すれば全体的には利益率が上がると思います。

乾燥幼虫 180-220円/kg
魚粉相場 272.55円/kg(2023年8月)(https://www.worldbank.org/en/research/commodity-markets)

アメリカミズアブの飼育残渣を使って食品廃棄物の臭気を抑える研究について

農研機構、東京大学、筑波大学による共同研究です。
 アメリカミズアブの飼育残渣を食物廃棄物に加わることで、食品廃棄物などから発生する腐敗臭を7分の1に減らせるという研究です。
 餌となる食物廃棄物に飼育残渣を事前に加えることで飼育環境の匂いを減らすことが期待されています。
 もちろん飼育した幼虫は飼料用のタンパク質や脂質として利用することも出来ます。

(研究成果) 昆虫の力を借りて食品廃棄物の臭気を抑える技術を開発

農研機構、東京大学、筑波大学の研究グループは、アメリカミズアブ幼虫の腸内細菌叢を含んだ飼育残渣を食品廃棄物に加えることで、食品廃棄物が発生する臭気を抑える技術を開発しました。本技術は、ミズアブを使った食品廃棄物の処理時に生じる悪臭の問題を解決し、ミズアブ処理による食品残渣のリサイクルの拡大と昆虫タンパク質の生産拡大に貢献します。

アメリカミズアブ(以下、ミズアブ)は食品ロスや生ごみなどの食品廃棄物を栄養源としても発育できる昆虫です。このミズアブを家畜や養殖魚の飼料のタンパク質源として利用する技術が世界的に広がりつつあります。一方、食品廃棄物を処理する際に悪臭が発生することが、ミズアブを利用した廃棄物処理プラント建設の障害となっています。

農研機構、東京大学、筑波大学の研究グループは、ミズアブが腸内細菌叢の力を借りて有機物を効率よく分解すること、食品廃棄物をミズアブのエサとして飼育した残渣には腸内細菌が大量に含まれることに着目しました。

食品廃棄物でミズアブを飼育すると、ミズアブを入れないで放置する場合と比較して、悪臭の主原因である二硫化メチル4)三硫化メチル5)等が激減しました。また、ミズアブを飼育する場合としない場合の食品廃棄物内で増殖する細菌の種類を比較したところ、ミズアブの有無により細菌の種類が大きく異なることを発見しました。ミズアブを飼育した食品廃棄物では、細菌の種数が減少する一方で、ラクトバシラス属6)エンテロコッカス属7)の細菌の割合が大きく変化していました。以上のことから、これらの細菌が悪臭の原因となる物質の蓄積を抑え、悪臭を抑制していると考えられます。

さらに、ミズアブの飼育残渣をエサとする食品廃棄物にあらかじめ加えることで、食品廃棄物が腐敗する際に発生する臭気を大きく抑制できることを明らかにしました。本技術によりミズアブ飼育の際に食品廃棄物から発生する臭気が抑えられ、ミズアブを利用した廃棄物処理プラントを建設する際の障壁を取り除くことができます。また、本技術は導入が容易であり、追加の投資もほとんど不要であることから、ミズアブによる食品廃棄物処理の利用拡大に大きく貢献します。

https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nias/158033.html


 

住友商事の昆虫由来代替タンパク質の取り組み

住友商事様も昆虫由来タンパク質への取り組みをされています。
マレーシアのスタートアップと提携されたようです。
プレスリリースには「同タンパク源市場は、2020年時点の175億円から2030年には3,500億円へと飛躍的に成長するとの予測もあります。」と記載もあるので、今後は同様の取り組みが広がると思います。
こちらはアメリカミズアブの幼虫を輸入するようです。

昆虫由来代替タンパク質製造企業・Nutrition Technologiesへの出資参画について

住友商事は、マレーシアで昆虫由来の代替タンパク質などを製造するスタートアップ企業、Nutrition Technologies(ニュートリション・テクノロジーズ、以下「NT」)に出資しました。今後、NTと協業して同社製品の市場開拓を進めるとともに高付加価値製品の開発を進め、世界の安定的・持続的な食料生産に貢献していきます。

世界的な人口増加と食の西洋化に伴い、タンパク質の需要は2050年には2005年比で約2倍となると予測されており、世界的なタンパク質不足が懸念されています。大量の穀物、土地、資源が必要となる既存の畜産・漁業・農業から得られる動物性・植物性タンパク源のみでは、世界全人口への供給には限界があり、より環境負荷の低いタンパク源が求められています。こうした中で注目されているのが、昆虫由来代替タンパク源です。現在、主な用途は、ペットフードや畜水産用飼料などの動物用ですが、将来的には人間用にも加工、使用されることが期待されており、同タンパク源市場は、2020年時点の175億円から2030年には3,500億円へと飛躍的に成長するとの予測もあります。

NTは食料問題を強く懸念した元国連職員により2015年に設立されました。シンガポールに本社を置き、2020年からマレーシアでアジア最大規模のBlack Soldier Fly(アメリカミズアブ、以下「BSF」)を養殖・加工する、アジア最大規模の昆虫由来代替タンパクの工場を運営しています。昆虫由来のタンパク源としては、コオロギやバッタなどが候補となる中、BSFは、繁殖の容易さ、豊富なタンパク質量、病原菌の媒介リスクの低さが特徴で、FAO(国際連合食糧農業機関)からも大きく期待を寄せられています。NTは、近隣の工場やプランテーションから出る食品残さ・副産物を飼料としてBSFを養殖し、幼虫を脱水・乾燥させ、高品質なタンパク質に加工する独自のノウハウを有しています。第一工場のあるマレーシアは、年間を通じて温暖なためBSFの生育において暖房を必要とせず、より環境負荷の低いタンパク製造を行っています。

本事業を推進するアニマルヘルスサイエンス部では、ペット・畜産向け動物薬などの事業を展開しており、既存事業の知見やネットワークを生かし、昆虫由来タンパク質を用いた飼料の開発・販売を行います。また、加工過程で生成される油やフラス(※)を利用した化粧品や医薬部外品、化学品、有機肥料などの高付加価値製品の開発にも取り組んでいきます。循環型経済を通じてサステナブルに自給自足する世界を創造することをビジョンに掲げるNTを戦略パートナーとして、限りある資源の有効活用、循環型社会の形成に取り組み、地球環境との共生を目指します。

フラス:昆虫のふんや殻くずなどが混ざったもの。

昆虫由来代替タンパク質製造企業・Nutrition Technologiesへの出資参画について

https://www.sumitomocorp.com/ja/jp/news/topics/2022/group/20221004

昆虫タンパク質を使った鯛の養殖

 魚粉の代わりに昆虫タンパク質を使った資料で養殖した鯛のお話しです。
愛媛大学との産学共同研究で鯛の養殖をし、クラウドファンディングで支援を募っています。
 今回使用されている昆虫タンパクはミルワームです。
 飼料用タンパク質として養殖される昆虫は世界的には「アメリカミズアブ」が多いようですが、「ミルワーム」も研究されています。
 「ミルワーム」も雑食で養殖において環境負荷が少ないと考えられています。
養殖された鯛も遜色ないようで、大変興味深いところです。

産学連携で誕生した「えひめ鯛」!昆虫を用いた真鯛のサステナブル養殖への挑戦

https://camp-fire.jp/projects/view/678076