ミズアブ生産ガイドライン

 大阪府立環境農林水産総合研究所が2023年2月28日に「ミズアブの食品および飼料原料としての利用における安全確保のための生産ガイドライン(ミズアブ生産ガイドライン)」を発表しています。

 その中に「人に対する食品と、家畜や養魚に対する飼料の両方に適した製品を提供すること」と文言があります。
 人間の食料と家畜の飼料のいずれにも適した商品を製造するのが理想的ではありますが、幼虫のエサの選定や生産環境などなかなか難しい面もあります。
 もちろん費用をかければそれも可能だとは思いますが、人食に適さない有機物(水草、残飯、傷んだおからやジュースの絞りかすなど)をエサとして飼育した幼虫を人が食べるのに適しているかは判断が難しいと思います。
 まずは飼料としての基準を満たした幼虫の生産技術の確立を目指すのが安定した供給にはよいと考えます。
 また、魚粉の代わりとして活用するのであれば、農業用肥料としての用途も広がります。
 ヨーロッパでは昆虫食用の幼虫と飼料用の生産ラインが建物から分けられており、生産管理も大きく異なっている企業もあるようです。
 中国の養鶏場では年間100t出る鶏糞を公害対策としてミズアブの幼虫のエサとして与え、生産されたミズアブは養鶏の飼料として活用されている事例もあります。
 それぞれの用途に適した工程で生産し、管理をするのが良いと考えています。

 

令和5年(2023年)2月28日 昆虫ビジネス研究開発プラットフォーム

https://www.knsk-osaka.jp/ibpf/guideline/bsf_guideline.html

前繭の脱走対策について

 アメリカミズアブの幼虫は、前繭、サナギ、成虫と成長します。
幼虫は湿潤な所を好みますが、前繭は羽化に最適な乾燥した場所に移動します。
同時期に孵化した幼虫でも個体差で前繭になるタイミングは数日異なります。
ですので、脱走対策は必須となります。
 「蓋」をするのが簡単ですが、湿度や餌の管理を考えると、蓋をするのは最適とは言いにくい面があります。
 前繭段階の少し前の段階で出荷するのが現実的な判断だと思います。
 次世代へ卵を収穫する場合は専用の空間を用意するのが良いと思います。

アメリカミズアブの幼虫から取れる油脂について

 アメリカミズアブの幼虫から収穫できるものの中には油脂類があります。
幼虫を圧搾することで得ることが出来ます。
 乾燥後の幼虫を圧搾することでも得られます。
 油脂の成分ですが、食べる餌で異なっていると記載がありました。
常温で液体の油もあれば、固体になる油もあるようです。
 製品として品質を安定させるにはやはり同じ餌を与え続けるのが良いようです。

九州電力によるサーモンの陸上養殖

 九州電力を中心に複数の会社がサーモンの陸上養殖に取り組んでいます。
九州電力の豊前発電所の敷地内に年間300tクラスの設備をつくり、今後は3000tクラスの設備を作る予定のようです。

 養殖魚の飼料の40-50%は魚粉が配合されています。
 先の投稿にも書きましたが、近年魚粉価格が高騰している理由として、養殖業が盛んになっていることも上げられます。
 魚粉の一部を昆虫タンパクに置き換えた飼料は20%程度安価に提供できるとの試算もあります。
 養殖業が盛んになればよりエサも必要となるので、益々昆虫養殖への注目が集まると考えられます。

https://ffmirai.com/

えひめ鯛のお味

 ミルワームの粉を魚粉と置き換えて養殖した鯛です。

以前、クラウドファンディングで支援させていただき、到着したのでご報告です。
冷凍で届きましたので、お刺身にするには少し柔らかかったですが、肉厚で甘みも強くとても美味しかったです。
 少なくとも飼料に昆虫を混ぜているからと行って味が落ちることは無いようです。
機会があれば冷凍では無く、生のお魚をいただきたいと思いました。

産学連携で誕生した「えひめ鯛」!昆虫を用いた真鯛のサステナブル養殖への挑戦


https://camp-fire.jp/projects/view/678076

ウナギの完全養殖!!

 近畿大学がニホンウナギの完全養殖に成功したそうです。
現在では大規模な養殖は難しく、稚魚を捕獲して養殖した場合と比べて費用面では10倍近くかかるようです。
 ですが、今後の研究次第では、低価格に提供されるかもしれません。

そこで養殖用の飼料のお話になります。
ウナギの養殖飼料は50%程度が祖タンパクとなっています。
愛媛大学の研究によると、昆虫タンパクには魚類の免疫を高める性質もあるようなので、成長の難しいウナギの養殖にも役に立つかもしれません。

近畿大学が絶滅危惧種の二ホンウナギの“完全養殖”に成功 大学としては世界初

https://news.yahoo.co.jp/articles/316fe595b12f7ad907b929ec1c377749bd994da4?page=1

魚類の陸上養殖について。

平成23年の農林水産省の報告では消費される魚の19%は養殖魚で、真鯛やブリは半分以上が養殖となっています。
 世界に目を向けてい見ると、2010年のFAOの報告では食用として6000万tの魚が消費され、そのうち養殖は46%となってます。
 また、水産物の未利用資源は3%のみと推定されており、天然の漁獲量をふやす余裕はなさそうです。
 世界的な魚消費量の増加も見込まれており2030年には4000万tの需要増が見込まれており、需要に応える方法は養殖しか無いようです。
 海面養殖には養殖に適した場所、季節、天候、災害などの影響、海水汚染などの管理面の問題など養殖範囲をふやすのも簡単ではないようです。

 そこで陸上養殖が注目されています。
 様式としては大きく2つにわけられ、「かけ流し式」と「閉鎖循環式」があります。
かけ流し式は海からポンプでとりいれた海水を陸上養殖に利用して、また海に戻すやり方です。
 閉鎖循環式はその名前の通り、海水を濾過しながら循環させる方式です。

 陸上養殖ではヒラメ、トラフグ、車エビ、アワビ類が壅塞されているようです。
閉鎖循環方式は完全に管理が可能で、かけ流し式と比較し多くのメリットがあります。
最近では、新規に参入する事業者も多いようです。
 いずれにしても、養殖魚のエサとなる魚粉の漁獲量も上限に達しており、昆虫養殖による飼料用タンパク質の確保も必要と考えられます。

陸上養殖勉強会のとりまとめについて

https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sanki/pdf/251010si1.pdf


 

アメリカミズアブの成虫の生態について

 アメリカミズアブが飼料用昆虫として優れている点は、収穫までの期間が短いだけではありません。
 一般的に「イエバエ」などは成虫もエサをたべ、足についた腐敗した有機物から病原菌を媒介する可能性が高いのですが、アメリカミズアブの成虫はエサを食べません。
 水しか飲まないので、病原菌を媒介するリスクが低いと考えられています。
また、水しか飲まないので羽化から5日程度で死んでしまいます。

 また成虫は2cm程度と大きく、網の隙間を抜けて外界に移動することも少ないと考えられています。

アメリカミズアブの世界、日本の分布について

アメリカミズアブは世界に広く分布しています。
 北は日本の北端、南はオーストラリア南端と特に熱帯地方から亜熱帯地方にかけて広範囲に分布が見られる。
 原産は北米から中米と言われており、日本には1950年頃に侵入してきたとかんがえられます。
 本州から沖縄にかけて広く自然繁殖し、便所バチと俗称もあります。
 高温多湿を好む傾向があり、インドネシアなど熱帯地方では繁殖が盛んで商品化されている地域もあります。
 

アメリカミズアブの産卵場所

アメリカミズアブは小さく、乾いた、守られた隙間に産卵すると記載があります。
 人工的に提供される産卵場所としては木片を重ねた隙間やダンボールの隙間が一般的に用いられているようです。
 特に大規模な養殖場では、与えるエサを管理するため正確な採卵が必要で、木片を重ねた隙間を産卵場所としているようです。
小規模な養殖場ではダンボールの隙間を利用していることが多いようです。

 隙間があればどこにでも産卵をしますが、想定場所以外に産卵をされては採卵が出来ず養殖が難しくなります。
 そこで大切になることは想定している産卵場所に成虫を誘引することになります。
 成虫を誘引する方法としては「水場」があげられますが、生まれた幼虫のエサとなる有機物周囲に産卵場所を用意した方が確実に誘引できるようです。