ウナギの完全養殖!!

 近畿大学がニホンウナギの完全養殖に成功したそうです。
現在では大規模な養殖は難しく、稚魚を捕獲して養殖した場合と比べて費用面では10倍近くかかるようです。
 ですが、今後の研究次第では、低価格に提供されるかもしれません。

そこで養殖用の飼料のお話になります。
ウナギの養殖飼料は50%程度が祖タンパクとなっています。
愛媛大学の研究によると、昆虫タンパクには魚類の免疫を高める性質もあるようなので、成長の難しいウナギの養殖にも役に立つかもしれません。

近畿大学が絶滅危惧種の二ホンウナギの“完全養殖”に成功 大学としては世界初

https://news.yahoo.co.jp/articles/316fe595b12f7ad907b929ec1c377749bd994da4?page=1

魚類の陸上養殖について。

平成23年の農林水産省の報告では消費される魚の19%は養殖魚で、真鯛やブリは半分以上が養殖となっています。
 世界に目を向けてい見ると、2010年のFAOの報告では食用として6000万tの魚が消費され、そのうち養殖は46%となってます。
 また、水産物の未利用資源は3%のみと推定されており、天然の漁獲量をふやす余裕はなさそうです。
 世界的な魚消費量の増加も見込まれており2030年には4000万tの需要増が見込まれており、需要に応える方法は養殖しか無いようです。
 海面養殖には養殖に適した場所、季節、天候、災害などの影響、海水汚染などの管理面の問題など養殖範囲をふやすのも簡単ではないようです。

 そこで陸上養殖が注目されています。
 様式としては大きく2つにわけられ、「かけ流し式」と「閉鎖循環式」があります。
かけ流し式は海からポンプでとりいれた海水を陸上養殖に利用して、また海に戻すやり方です。
 閉鎖循環式はその名前の通り、海水を濾過しながら循環させる方式です。

 陸上養殖ではヒラメ、トラフグ、車エビ、アワビ類が壅塞されているようです。
閉鎖循環方式は完全に管理が可能で、かけ流し式と比較し多くのメリットがあります。
最近では、新規に参入する事業者も多いようです。
 いずれにしても、養殖魚のエサとなる魚粉の漁獲量も上限に達しており、昆虫養殖による飼料用タンパク質の確保も必要と考えられます。

陸上養殖勉強会のとりまとめについて

https://www.maff.go.jp/j/shokusan/sanki/pdf/251010si1.pdf


 

アメリカミズアブの成虫の生態について

 アメリカミズアブが飼料用昆虫として優れている点は、収穫までの期間が短いだけではありません。
 一般的に「イエバエ」などは成虫もエサをたべ、足についた腐敗した有機物から病原菌を媒介する可能性が高いのですが、アメリカミズアブの成虫はエサを食べません。
 水しか飲まないので、病原菌を媒介するリスクが低いと考えられています。
また、水しか飲まないので羽化から5日程度で死んでしまいます。

 また成虫は2cm程度と大きく、網の隙間を抜けて外界に移動することも少ないと考えられています。

アメリカミズアブの世界、日本の分布について

アメリカミズアブは世界に広く分布しています。
 北は日本の北端、南はオーストラリア南端と特に熱帯地方から亜熱帯地方にかけて広範囲に分布が見られる。
 原産は北米から中米と言われており、日本には1950年頃に侵入してきたとかんがえられます。
 本州から沖縄にかけて広く自然繁殖し、便所バチと俗称もあります。
 高温多湿を好む傾向があり、インドネシアなど熱帯地方では繁殖が盛んで商品化されている地域もあります。
 

アメリカミズアブの産卵場所

アメリカミズアブは小さく、乾いた、守られた隙間に産卵すると記載があります。
 人工的に提供される産卵場所としては木片を重ねた隙間やダンボールの隙間が一般的に用いられているようです。
 特に大規模な養殖場では、与えるエサを管理するため正確な採卵が必要で、木片を重ねた隙間を産卵場所としているようです。
小規模な養殖場ではダンボールの隙間を利用していることが多いようです。

 隙間があればどこにでも産卵をしますが、想定場所以外に産卵をされては採卵が出来ず養殖が難しくなります。
 そこで大切になることは想定している産卵場所に成虫を誘引することになります。
 成虫を誘引する方法としては「水場」があげられますが、生まれた幼虫のエサとなる有機物周囲に産卵場所を用意した方が確実に誘引できるようです。
 

アメリカミズアブの成長割合

アメリカミズアブのメスは1回当たり400-800個の卵を産卵すると言われています。
そのうち幼虫として孵化する割合は60%程度と推定されています。
 孵化後5日齢の幼虫が成長し、前繭になるのは90%程度、前繭からサナギになるのは85%、サナギから成虫に羽化するのは85%程度と言われています。
 ですので500個の卵が成虫になる数は200匹程度と推定されます。

雄と雌で半分と考えると、500個の卵から100匹のメスが生まれ、それぞれが500個の卵を産卵すると仮定すると1回のlifeサイクルで100倍の個体が生まれることになります。
ですので、幼虫の数を維持するのに必要な卵の割合は1%程度となります。
 残りの99%の幼虫は商品として出荷することが可能になります。
非常に再生産性が高い生物と言えます。

アメリカミズアブの幼虫の生育環境

アメリカミズアブの幼虫ですが、どの様な生育環境を好むのでしょうか。
どの様な環境でも生育できるようですが、どちらかというと湿度が高い環境を好みます。
 具体的には60%-90%程度の湿度の環境をを好むようですが、人工的に生育する場合は70%程度の湿度に管理することが多いようです。
 飼育ケースの壁際に乾燥したココナッツの粉を蒔くとケースから脱出予防になります。
 また、明るいところよりは暗いところを好みますので、普段は飼育ケースの下に潜っており、成育中に幼虫はほとんど見ません。
 飼育温度は25℃から32℃ぐらいが良いようです。
 
 

海水魚の配合飼料のお話し

 原材料の魚粉を昆虫粉に置き換えることで、魚粉の使用量が削減できます。
東南アジアなどでは淡水魚や養鶏用の飼料を置き換えることが進んでいます。
日本では海水魚の養殖が盛んで、真鯛やぶりなどの飼料として昆虫粉を使うという課題があります。

「国立研究開発法人 水産研究・教育機構」の研究では真鯛に与える配合飼料中の魚粉の5割を昆虫粉に置き換えても従来のエサとの生育が変わらないという研究があります。
 またぶりでも同様の結果が出ているようです。
ですが8割を置き換えた場合は真鯛の生育が遅くなると言うデータもあるようです。
 どの程度の配合比率が最適化は魚種ごとに異なると思われますし、さらなる研究が必要と思われます。
 日本の年間の魚粉の使用量は40万トン、輸入量は24万トンと推定されており、昆虫粉を国産でまかなえれば魚粉の輸入量は大きく減らせると考えられます。

https://www.fra.affrc.go.jp/pressrelease/pr2022/20221004/20221004press.pdf

アメリカミズアブの養殖に必要な餌の量

 アメリカミズアブが食べる餌は1日あたり体重の2-3倍と言われています。
インドネシアの実例では1tの有機残渣を与えることで170kgの幼虫と400kgのfrassを生産しているようです。
 エサに含まれる水分量で変化しますが、概算で1tの幼虫を生産するには6tのエサが必要になる計算です。
 

 平成23年の日本豆腐協会の報告では約66万トンのおからが生産されています。
飼料用や肥料と流通していますが、全体の5-9%は産業廃棄物として処理されています。
概算で3.3-10万トン程度は廃棄されています。
 その飼料を活用できれば5610-17000tもの幼虫が生産できる計算になります。

食品リサイクル法に係る豆腐業界に於ける食品廃棄物排出の実態について

https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokusan/recycle/haiki_h23_04/pdf/111202_data2-6.pdf


アメリカミズアブの出荷タイミング

 全世界に広く分布するアメリカミズアブですが、成長には段階があります。
幼虫は暗くて湿度が高いところで成長しますが、さなぎは暗くて乾いているところで成熟します。
ですので、前繭は地中から這いだし、高いところに移動する習性があります。
 その習性を利用して収穫することも出来ますが、成熟した幼虫も収穫段階にあり、習性を利用した自然収穫は効率的とは言えません。
 前繭段階の成熟した幼虫をふるいにかけて収穫することが多いようです。
この段階で幼虫を商品として出荷することが可能になります。
 卵から成熟した幼虫までの日数は14日前後で成長が早いのが特徴です

アメリカミズアブの成長日数

幼虫:12から14日
前繭:14から20日
さなぎ:20から34日
成虫:34から40日