産卵の条件

アメリカミズアブは羽化後は水だけで生活し、交尾、産卵をして4-5日程度で寿命を全うします
産卵場所は「狭い隙間」で、採卵するために木の板に隙間をつくったものやダンボールの隙間を使っている動画が多く見られます。

 都内の自室で飼育してるアメリカミズアブですが、成虫にはなるのですが、採卵が難しい事がおおいです。
 そもそも産卵しないことも多いですし、予定していない隙間に産卵することがあり、採卵が出来ません。
 採卵場所に誘引する方法としては水場の近くや、孵化後の幼虫のエサとなる有機物の近くにダンボールを置くと良いようですが、なかなか上手くいかないものです。

 恐らく、交尾、産卵させるには温度などの他の条件もいくつかあるのだと思います。
生き物が相手ですので予定通り行かないことも多いですが、それはそれで興味深いものです。

羽化しました

 前回のブログで紹介した都内のマンションで飼育しているアメリカミズアブ。
サナギを黒いケースに入れて保存していたのですが、カサカサと音がしました。
耳を澄ますと、空気穴から羽音がしたので、そっと蓋を開けたところ、成虫が見えました。

 羽化していたようです。
暖房も入れていない部屋で羽化することは想定していませんでしたが、成長が遅くても冬眠はしていなかったようです。
 とりあえず、飼育ケースを用意して産卵させたいと思っていますが、ここからが意外と思い通りになりません。
 産卵場所で産卵してくれないことが多いのです。
今回は成虫の飼育ケースを少し小さくして、成虫の密度をあげ。産卵場所も減らしました。
これで上手く採卵出来ると良いのですが。

 ちなみに、他のサナギも羽化しており、冬眠はしていなかったようです。

冬眠?

 都内の部屋で飼育しているアメリカミズアブ。
 前繭からサナギの個体は乾燥した暗部で飼育していますが、2週間が過ぎても成虫に羽化していません。
 恐らく、部屋が寒いので冬眠段階に移行しているように思います。
 やはり継続的に飼育するには28-35℃ぐらいの安定した空間が必要な用です。

 東南アジアや中央アジアでの養殖が盛んな理由はその点にあるように思えます。
 ですが都心部での養殖は残飯などのエサが豊富で、運搬コストが安いというメリットもあります。
 ボイラー室などの暖かい部屋の隅でも生育が可能なので、都会での小規模養殖も可能だと考えています。
 

アメリカミズアブとミルワーム

飼料用昆虫として注目されているのが、アメリカミズアブとミルワーム。
それぞれに特徴があると思いますが、何が違うのでしょうか。

アメリカミズアブはサナギから成虫にかけてエサを食べません。成虫は水分だけを接種して5日程度で死にます。
ミルワームはチャイロコメノゴミムシダマシの幼虫で、成虫もエサを食べます。
また幼虫と成虫の生育環境が似ており、同じケージで飼うことが可能ですが、共食いをするので幼虫やサナギなどは食べられてしまいます。

 ヨーロッパ、東南アジア、中央アジアなど海外ではアメリカミズアブの養殖が盛んで、比較的文献も手に入れやすく情報が豊富にあると言えます。
 アメリカミズアブは前繭段階で幼虫と生育環境が違うので、共食いリスクが無いと考えられています。

 また、アメリカミズアブは明治時代に日本に入ってきており、仮に自然環境に逃げてしまっても生態系に影響を与えることは少ないと思います。

 ただ、アメリカミズアブは便所ハエと呼ばれており、印象は良くないようにおもいます。

 

農業用の飼料への応用について 

 先日、地方の畑道を走っていたところ、大きすぎて収穫後放置されたサツマイモや収穫せずに放置されたにんじんなどがありました。
 また、籾殻も積み上がっていました。
 次期にまとめて耕し肥料にするのだと思います。

 農業にも鶏糞、牛糞、魚粉などの動物性タンパク質を肥料として利用しています。
 そこで、放棄された作物をエサとして幼虫を養殖し、排泄物や脱皮ガラと共に農業用肥料とするのはいかがでしょうか。
 エサについた土なども処理する必要がありませんし、幼虫とfrassを分ける作業もいりません。
 まとめてペレットに加工すれば作業は終了します。
 費用対効果を検討する必要はありますが、ひとつのアイディアとして面白いと思います。

ミズアブ生産ガイドライン

 大阪府立環境農林水産総合研究所が2023年2月28日に「ミズアブの食品および飼料原料としての利用における安全確保のための生産ガイドライン(ミズアブ生産ガイドライン)」を発表しています。

 その中に「人に対する食品と、家畜や養魚に対する飼料の両方に適した製品を提供すること」と文言があります。
 人間の食料と家畜の飼料のいずれにも適した商品を製造するのが理想的ではありますが、幼虫のエサの選定や生産環境などなかなか難しい面もあります。
 もちろん費用をかければそれも可能だとは思いますが、人食に適さない有機物(水草、残飯、傷んだおからやジュースの絞りかすなど)をエサとして飼育した幼虫を人が食べるのに適しているかは判断が難しいと思います。
 まずは飼料としての基準を満たした幼虫の生産技術の確立を目指すのが安定した供給にはよいと考えます。
 また、魚粉の代わりとして活用するのであれば、農業用肥料としての用途も広がります。
 ヨーロッパでは昆虫食用の幼虫と飼料用の生産ラインが建物から分けられており、生産管理も大きく異なっている企業もあるようです。
 中国の養鶏場では年間100t出る鶏糞を公害対策としてミズアブの幼虫のエサとして与え、生産されたミズアブは養鶏の飼料として活用されている事例もあります。
 それぞれの用途に適した工程で生産し、管理をするのが良いと考えています。

 

令和5年(2023年)2月28日 昆虫ビジネス研究開発プラットフォーム

https://www.knsk-osaka.jp/ibpf/guideline/bsf_guideline.html

前繭の脱走対策について

 アメリカミズアブの幼虫は、前繭、サナギ、成虫と成長します。
幼虫は湿潤な所を好みますが、前繭は羽化に最適な乾燥した場所に移動します。
同時期に孵化した幼虫でも個体差で前繭になるタイミングは数日異なります。
ですので、脱走対策は必須となります。
 「蓋」をするのが簡単ですが、湿度や餌の管理を考えると、蓋をするのは最適とは言いにくい面があります。
 前繭段階の少し前の段階で出荷するのが現実的な判断だと思います。
 次世代へ卵を収穫する場合は専用の空間を用意するのが良いと思います。

アメリカミズアブの幼虫から取れる油脂について

 アメリカミズアブの幼虫から収穫できるものの中には油脂類があります。
幼虫を圧搾することで得ることが出来ます。
 乾燥後の幼虫を圧搾することでも得られます。
 油脂の成分ですが、食べる餌で異なっていると記載がありました。
常温で液体の油もあれば、固体になる油もあるようです。
 製品として品質を安定させるにはやはり同じ餌を与え続けるのが良いようです。

九州電力によるサーモンの陸上養殖

 九州電力を中心に複数の会社がサーモンの陸上養殖に取り組んでいます。
九州電力の豊前発電所の敷地内に年間300tクラスの設備をつくり、今後は3000tクラスの設備を作る予定のようです。

 養殖魚の飼料の40-50%は魚粉が配合されています。
 先の投稿にも書きましたが、近年魚粉価格が高騰している理由として、養殖業が盛んになっていることも上げられます。
 魚粉の一部を昆虫タンパクに置き換えた飼料は20%程度安価に提供できるとの試算もあります。
 養殖業が盛んになればよりエサも必要となるので、益々昆虫養殖への注目が集まると考えられます。

https://ffmirai.com/

えひめ鯛のお味

 ミルワームの粉を魚粉と置き換えて養殖した鯛です。

以前、クラウドファンディングで支援させていただき、到着したのでご報告です。
冷凍で届きましたので、お刺身にするには少し柔らかかったですが、肉厚で甘みも強くとても美味しかったです。
 少なくとも飼料に昆虫を混ぜているからと行って味が落ちることは無いようです。
機会があれば冷凍では無く、生のお魚をいただきたいと思いました。

産学連携で誕生した「えひめ鯛」!昆虫を用いた真鯛のサステナブル養殖への挑戦


https://camp-fire.jp/projects/view/678076