アメリカミズアブの餌となるもの

アメリカミズアブは世界各国に分布するハエ目ミズアブ科の昆虫です。
その幼虫は2cm程度と大きく、ふるいによる選別が可能で飼料用昆虫タンパク質として世界で広く認識されています。

非常に幅広い有機物を餌として食べることができます。

具体的には、人間の残飯、フルーツ、動物の糞尿などの排泄物、おから、ふすま粉、ビールの絞りかす、酒粕、コーヒーやお茶の出涸らし、水草など大抵の有機物を食べて成長します。

全世界で生産されている食物のうち廃棄されている量は1/3程度で、年間13億トンとの報告もあり、アメリカミズアブの餌には困ることはなさそうです。

世界の食料ロスと食料(2011年)

https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2010/spe1_01.html

養殖魚用配合飼料の補助金について

養殖魚用の配合飼料の約50%はカタクチイワシから作られる魚粉です。
ここ20年で魚粉価格が4倍近くなっていますが、将来の漁獲量を確保するために制限があり、漁獲量はほぼ上限に達していると言われています。
配合飼料の一部でも養殖された昆虫タンパク質に置き換えることが出来れば、魚粉価格の高騰がおきても、配合飼料の価格上昇は緩やかになると考えられます。

また、近年の光熱費の上昇もあり、配合飼料の価格は上昇しています。

宮城県や静岡県など複数の県では配合飼料の補助金申請を受け付けています。

令和5年度宮城県養殖業飼料価格高騰対策事業費支援金について

https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/suikisei/r5shiryoukoutou.html

アメリカミズアブの飼育残渣を使って食品廃棄物の臭気を抑える研究について

農研機構、東京大学、筑波大学による共同研究です。
 アメリカミズアブの飼育残渣を食物廃棄物に加わることで、食品廃棄物などから発生する腐敗臭を7分の1に減らせるという研究です。
 餌となる食物廃棄物に飼育残渣を事前に加えることで飼育環境の匂いを減らすことが期待されています。
 もちろん飼育した幼虫は飼料用のタンパク質や脂質として利用することも出来ます。

(研究成果) 昆虫の力を借りて食品廃棄物の臭気を抑える技術を開発

農研機構、東京大学、筑波大学の研究グループは、アメリカミズアブ幼虫の腸内細菌叢を含んだ飼育残渣を食品廃棄物に加えることで、食品廃棄物が発生する臭気を抑える技術を開発しました。本技術は、ミズアブを使った食品廃棄物の処理時に生じる悪臭の問題を解決し、ミズアブ処理による食品残渣のリサイクルの拡大と昆虫タンパク質の生産拡大に貢献します。

アメリカミズアブ(以下、ミズアブ)は食品ロスや生ごみなどの食品廃棄物を栄養源としても発育できる昆虫です。このミズアブを家畜や養殖魚の飼料のタンパク質源として利用する技術が世界的に広がりつつあります。一方、食品廃棄物を処理する際に悪臭が発生することが、ミズアブを利用した廃棄物処理プラント建設の障害となっています。

農研機構、東京大学、筑波大学の研究グループは、ミズアブが腸内細菌叢の力を借りて有機物を効率よく分解すること、食品廃棄物をミズアブのエサとして飼育した残渣には腸内細菌が大量に含まれることに着目しました。

食品廃棄物でミズアブを飼育すると、ミズアブを入れないで放置する場合と比較して、悪臭の主原因である二硫化メチル4)三硫化メチル5)等が激減しました。また、ミズアブを飼育する場合としない場合の食品廃棄物内で増殖する細菌の種類を比較したところ、ミズアブの有無により細菌の種類が大きく異なることを発見しました。ミズアブを飼育した食品廃棄物では、細菌の種数が減少する一方で、ラクトバシラス属6)エンテロコッカス属7)の細菌の割合が大きく変化していました。以上のことから、これらの細菌が悪臭の原因となる物質の蓄積を抑え、悪臭を抑制していると考えられます。

さらに、ミズアブの飼育残渣をエサとする食品廃棄物にあらかじめ加えることで、食品廃棄物が腐敗する際に発生する臭気を大きく抑制できることを明らかにしました。本技術によりミズアブ飼育の際に食品廃棄物から発生する臭気が抑えられ、ミズアブを利用した廃棄物処理プラントを建設する際の障壁を取り除くことができます。また、本技術は導入が容易であり、追加の投資もほとんど不要であることから、ミズアブによる食品廃棄物処理の利用拡大に大きく貢献します。

https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nias/158033.html


 

養殖の魚も「昆虫食」、愛媛大らが昆虫飼育工場を建設へ

以前にも紹介した、愛媛大学とDNPの昆虫養殖の取り組みが再度紹介されています。

クラウドファンディングで募集されている昆虫飼料で養殖された鯛についても記事に記載されています。
少しずつですが、飼料用の昆虫養殖が認知され始めているのかもしれません。

以下引用

愛媛大学は、以前から昆虫を使った養殖魚用餌の開発を行ってきた。昆虫を1割混ぜた餌で8000匹のマダイを飼育する大規模実験では、従来の餌よりも成長速度が速く、病気になりにくく、味も遜色ないことが確認され、今年春にはそのマダイの販売も始まった。 気候変動や乱獲により天然魚の漁獲量が減ったこの20年ほどで魚の養殖の需要が世界で激増したが、そこで問題になっているのが餌だ。じつは養殖魚の餌はおもにカタクチイワシの魚粉が使われている。結局は天然資源に依存していることに変わりがない。さらにその魚粉は輸入に頼っていて、価格は20年前の4倍程度に高騰したという。これがイワシの乱獲を招く心配もある。そこで魚粉を使わないサステナブルな餌の開発が各方面で行われている。そのひとつが昆虫だ。 愛媛大学が使っている昆虫は、ミルワームというチャイロコメノゴミムシダマシの幼虫。雑食性で繁殖力が強く、アミノ酸や不飽和脂肪酸を多く含み、小さなスペースで簡単に飼育できて環境負荷が低いと、いいことづくめだ。同大学は、ミルワームを自動飼育する装置の開発に乗り出した。協力するのは大日本印刷。「印刷で培った機械設計から大量生産に関する技術や経験」を活かして動物性飼育原料の国産化を目指すとのこと。研究段階から事業化のフェーズに進むことになる。 これから愛媛大学は、ミルワームのための実験室を新設し、そこで育ったミルワームをプロテイン源とする餌で魚がどう育つかを確認する。また、2024年3月にはミルワームの自動飼育装置を開発し、ラボ規模の施設を建設する予定。将来的には年間100トンのミルワーム粉末を生産できるミルワーム飼育工場を建設するとのことだ。

 

養殖の魚も「昆虫食」、愛媛大らが昆虫飼育工場を建設へ

https://forbesjapan.com/articles/detail/65344?read_more=1

住友商事の昆虫由来代替タンパク質の取り組み

住友商事様も昆虫由来タンパク質への取り組みをされています。
マレーシアのスタートアップと提携されたようです。
プレスリリースには「同タンパク源市場は、2020年時点の175億円から2030年には3,500億円へと飛躍的に成長するとの予測もあります。」と記載もあるので、今後は同様の取り組みが広がると思います。
こちらはアメリカミズアブの幼虫を輸入するようです。

昆虫由来代替タンパク質製造企業・Nutrition Technologiesへの出資参画について

住友商事は、マレーシアで昆虫由来の代替タンパク質などを製造するスタートアップ企業、Nutrition Technologies(ニュートリション・テクノロジーズ、以下「NT」)に出資しました。今後、NTと協業して同社製品の市場開拓を進めるとともに高付加価値製品の開発を進め、世界の安定的・持続的な食料生産に貢献していきます。

世界的な人口増加と食の西洋化に伴い、タンパク質の需要は2050年には2005年比で約2倍となると予測されており、世界的なタンパク質不足が懸念されています。大量の穀物、土地、資源が必要となる既存の畜産・漁業・農業から得られる動物性・植物性タンパク源のみでは、世界全人口への供給には限界があり、より環境負荷の低いタンパク源が求められています。こうした中で注目されているのが、昆虫由来代替タンパク源です。現在、主な用途は、ペットフードや畜水産用飼料などの動物用ですが、将来的には人間用にも加工、使用されることが期待されており、同タンパク源市場は、2020年時点の175億円から2030年には3,500億円へと飛躍的に成長するとの予測もあります。

NTは食料問題を強く懸念した元国連職員により2015年に設立されました。シンガポールに本社を置き、2020年からマレーシアでアジア最大規模のBlack Soldier Fly(アメリカミズアブ、以下「BSF」)を養殖・加工する、アジア最大規模の昆虫由来代替タンパクの工場を運営しています。昆虫由来のタンパク源としては、コオロギやバッタなどが候補となる中、BSFは、繁殖の容易さ、豊富なタンパク質量、病原菌の媒介リスクの低さが特徴で、FAO(国際連合食糧農業機関)からも大きく期待を寄せられています。NTは、近隣の工場やプランテーションから出る食品残さ・副産物を飼料としてBSFを養殖し、幼虫を脱水・乾燥させ、高品質なタンパク質に加工する独自のノウハウを有しています。第一工場のあるマレーシアは、年間を通じて温暖なためBSFの生育において暖房を必要とせず、より環境負荷の低いタンパク製造を行っています。

本事業を推進するアニマルヘルスサイエンス部では、ペット・畜産向け動物薬などの事業を展開しており、既存事業の知見やネットワークを生かし、昆虫由来タンパク質を用いた飼料の開発・販売を行います。また、加工過程で生成される油やフラス(※)を利用した化粧品や医薬部外品、化学品、有機肥料などの高付加価値製品の開発にも取り組んでいきます。循環型経済を通じてサステナブルに自給自足する世界を創造することをビジョンに掲げるNTを戦略パートナーとして、限りある資源の有効活用、循環型社会の形成に取り組み、地球環境との共生を目指します。

フラス:昆虫のふんや殻くずなどが混ざったもの。

昆虫由来代替タンパク質製造企業・Nutrition Technologiesへの出資参画について

https://www.sumitomocorp.com/ja/jp/news/topics/2022/group/20221004

丸紅株式会社の昆虫タンパク質の取り組み

 2023年3月に丸紅株式会社がフランスの昆虫養殖ベンチャーとの提携を発表しています。
日本でも、食品製造工程で出てくる野菜クズやなどを利用して、飼料としての昆虫タンパク製造をしていけると良いのですけども。

以下引用です

丸紅株式会社(以下、「丸紅」)は、フランスに本社を置く世界最大の昆虫由来タンパク製造・販売企業の SAS Ÿnsect(以下、「インセクト社」)と、インセクト社の日本市場進出に向けた協業(以下、「本取組」)について基本合意書を締結しました。

世界的な人口増加と経済発展により、2050年の世界の食料需要は2010年比1.7倍、タンパク質需要は2005年比約2倍となることが予測されており、食糧危機とタンパク質危機(プロテインクライシス)が社会課題となっています。なかでも、ブリやマダイ等の水産養殖業に欠かせない飼料原料であるカタクチイワシ等の魚粉は、長年にわたる捕獲や世界的な需要の増加により需給のひっ迫が懸念されています。日本は魚粉使用量世界第2位となっており、持続可能な水産養殖業の実現のため、今後も価格高騰が予想される海外産魚粉の代替原料開発といったソリューションの必要性が高まっています。

インセクト社は、かかる社会課題を解決するため2011年に設立され、フランス、オランダ、米国の 3つの生産拠点を運営しており、2023年中にフランスで新たに世界最大の昆虫由来タンパク生産拠点を開設予定です。EUで食用としての使用も許可されているミルワームを原料とし、既に畜産・水産養殖・ペット用、食用、肥料用に商品を製造・販売しています。

丸紅は、主食となる穀物、畜産・水産物等の良質なタンパク源の確保を通じて、食の安定供給に貢献すべく、水産飼料製造等の多角的な事業・トレーディングを行っており、中期経営戦略GC2024 においてはグリーンのトップランナーになることを目標に、「環境配慮型食料」に注力しています。

丸紅、およびインセクト社は、食用魚介類の消費量が世界的にも多い日本において、持続可能な水産養殖業、ひいてはフードサプライチェーンの構築に貢献すべく本取組を実施していきます。

世界最大の昆虫由来タンパク製造・販売企業インセクト社の日本市場進出に向けた協業について

https://www.marubeni.com/jp/news/2023/release/00028.html

長崎大学発の昆虫由来代替プロテインの開発・製造のベンチャーの紹介です

長崎大学発の昆虫タンパク質の製造をしているベンチャー企業様です。
長崎大学生協で売れ残ったお弁当を餌として与えて、ミルワームを養殖しています。
大学と共同研究をされており、生育過程はAI(人工知能)を取り入れた自動化の開発もされています。

株式会社Booon

https://booon.co.jp/

DNPと愛媛大学によるミルワームの養殖

2023年8月9日 19:00の日本経済新聞の切り抜きです。
日本でも大手企業が飼料用昆虫タンパクの養殖に取り組み始めました。
ミルワームの養殖に挑戦するようです。

以下記事の引用です。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC047B70U3A800C2000000/

大日本印刷(DNP)は愛媛大学と共同で養殖魚の飼料となる幼虫を自動で飼育する装置を開発する。2024年3月末までに最初の試験プラントを愛媛県内に造り、26年3月末にも幼虫を粉末状に加工して年間約100トン出荷する目標だ。主な養殖飼料である輸入品の魚粉の価格が高騰する中、国産で安定供給できる体制を築く。

DNPと愛媛大学によるミルワームの養殖

昆虫タンパク質を使った鯛の養殖

 魚粉の代わりに昆虫タンパク質を使った資料で養殖した鯛のお話しです。
愛媛大学との産学共同研究で鯛の養殖をし、クラウドファンディングで支援を募っています。
 今回使用されている昆虫タンパクはミルワームです。
 飼料用タンパク質として養殖される昆虫は世界的には「アメリカミズアブ」が多いようですが、「ミルワーム」も研究されています。
 「ミルワーム」も雑食で養殖において環境負荷が少ないと考えられています。
養殖された鯛も遜色ないようで、大変興味深いところです。

産学連携で誕生した「えひめ鯛」!昆虫を用いた真鯛のサステナブル養殖への挑戦

https://camp-fire.jp/projects/view/678076